「どうして写真集を作るんですか?」
ひきこもり問題は日本において未だその総数すら把握されていません。しかし、一説には150万人を超えるとも言われていて、大きな問題にもなっています(当時者の家族や近親者も、当事者の隣にいるもう一つの当時者だと言えるだろう。だとすればこれは1,000万人が当時者だといっても過言ではないのだろう)。言わば「不可視の社会問題」です。
それほどに多くの人がひきこもらざるを得ないほど、この社会には生きづらい事情がたくさんあるのだと思います。けれど、そこに陥ってしまった者への偏見や差別が未だあります。
また当事者の言葉が聞きづらい、存在が見えづらい問題ですから、社会の多くはまだ、将来自分も経験しうる問題だという想定も薄いのです。
とはいえ、例えばテレビ局がその存在を暴くように映すことは、「映像の暴力」にもなりえます。近年、ひきこもりの存在の取り扱い方について、マスメディアによる報道の倫理性が問題だとして話題にもなりました。報道の名の下に、社会的弱者の事情が踏み荒らされてきたのです。
▶︎参考:<テレ朝「TVタックル」を精神科医らが批判、暴力的手法で「ひきこもり当事者」を連れ出す映像を放送> 2016/04/04 (弁護士ドットコム) http://news.nicovideo.jp/watch/nw2123168
それに対し、”当事者自らがシャッターを押し”、アートの文脈の募集システムを利用して、写真集を中心とした表現発表がなされることは、これらの問題を社会全体で考えていくきっかけになると考えています。
「暴く」ことではなく、自ら表現することやありのままを価値にすることを提案しています。
撮影及び写真の提供に関して説得や強要はしません。あくまで、このプロジェクトの趣旨に賛同し、参加したいという方からの写真を受け付けます。ご本人の意思に背く手段や、第三者による撮影や写真提供は受け付けません。
僕がひきこもっていた部屋の写真を公開し、のちに作品やプロジェクトの要素として取り込んできた理由は、その永い時間を人知れず無価値なものにされるのが耐え切れなかったからだろう。社会への怒りであり、承認欲求であり、苦しんだ永い時間への全面的な肯定のために。
2018年8月21日(火) 茨城県水戸市で