研究者らとの対話

 

 

 

今月6日、日本福祉大学名古屋キャンパスにて『ひきこもりとアート』と題するシンポジウムに登壇してきました。「心的外傷:トラウマ」について研究する精神医学の領域の学会が主催です。来場者は研究者を中心に、多くの方が集まりました。

 

 渡辺は過去、当事者としての時間を終えたのち現代美術家として復帰しました。経験をどのように作品化やプロジェクト化してきたのか。そこで得た考察などを発表し、映像作品の上映もしてきました。

 

 名古屋大学の古橋忠晃先生はフランスを中心とするヨーロッパのひきこもり実態の調査研究の第一人者であり、かつ臨床の現場で得た知見について発表を。ひきこもりは全世界的に増えてきていて、多くの地域で"Hikikomori"と呼ばれている。それがなぜ日本に多いのか。これまでは”クールジャパン”として日本の文化はポジティブに肯定されてきたが、「日本という国が作る生きづらさ」についての分析が海外からも”Hikikomori”の理解のために注目され始めているそうです。

 

 他にも、大饗広之先生 (日本福祉大学)は、近現代の社会構造の推移や美術史の流れから見る人々の心の変化について発表。 討論時間では、杉山登志郎先生 (福井大学)が登壇者3人に鋭い質問を投げ、ひきこもりという現象に対して考察を深める時間になりました。

 

 関東のひきこもりムーブメントはここ5年ほど当事者主体の動向が盛り上がってきていて、素晴らしい事だと思います。反面、普段ほとんど対話する機会の無かった研究者側の考察を聞くことが今回出来て、そこでの深さや広がりが想像以上に濃いものだったと知り驚きました。貴重な機会をいただけて感謝しています。


 Photos :Rina Kawai